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「!」
屋上に出た由寿を見て、私は息を飲んだ。
いつも夜の闇でしか見たことなかった由寿が、昼の光に縁取られていた。
由寿はとても綺麗だった。
どうして隠したがるのかは分からなかった。
でも…
誰にも見せたくないと思った。
二人で柵にもたれて下を眺める。
どちらも何も話さない。
ただ心地よい秋めいた風が吹き抜けていくだけ。
「由寿、」
「雛、」
話そうとした瞬間、由寿も同時に話し掛けてきた。
二人で顔を見合わせる。
「「いいよ、そっち…」」
譲る言葉も重なる。
ふっと和んで、私は由寿に先を譲った。
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