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「甘えるのって、すごく気持ちいいじゃない?楽だし…でもね、」
再び話し始めた由寿がちらりと私を見る。
「それじゃ、いつまで経っても距離が縮まらないと思うの。傷ついてもいいから…私はもっとたくさん雛と話したい。」
そう言い切った由寿が、今度は強く私を見つめてくる。
二人の間を風が吹き抜け、耳にかかった由寿の髪をまた散らす。
私はその髪に手を伸ばし、ゆっくり梳く。
「…雛の番だよ。」
そう小さく呟いて、由寿は睫毛を伏せた。
少しだけ息を吐き、唇をぎゅっと結ぶ。
「私も同じことが言いたかった。」
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