安定剤・興奮剤

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「むー。」 泉が膨れっ面をしてみせる。 「くくくっ、怒った?」 私は布団を持ち上げ、泉の右側に滑り込む。 左腕を首下に遣り、腕の中に泉を抱き留める。 「よしよし、じゃ寝よ?」 「うん…」 冷んやりとした髪に触れる。 冷たい空気に満ちた部屋。 静まり返った夜の闇。 時折聞こえる冷蔵庫の唸り声。 遠くを走るバイクの音。 今夜も平和なものに包まれて眠る。 「ねぇ穂乃香、」 抱き合う形で眠る泉が話し掛けてくる。 「何?」 「穂乃香は私の安定剤だよ。こうやってると、温かい体と匂いで、安心して眠れる。」
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