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「…帰る、」
しばらくしてそう言ってから、芹花は教室から出ていった。
私はその後ろ姿を見送ることもせず、じっと外を見ていた。
「郁、」
侑登が私の机に肘をつき、私の顔を覗き込む。
「また芹花ちゃんに酷いこと言ったのかよ。」
「酷いって、別に私は思ってることを言っただけ。」
「それが一番残酷なんだよ。」
はぁ、と侑登が溜め息を吐く。
「郁さぁ…知らないわけじゃないんだろ、芹花ちゃんの」
「ほら、予鈴鳴ってる。前向いた向いた、」
掌を振って、侑登を前に向かせた。
そうだよ、知らないわけじゃない。
でも…
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