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「…いいの。」
「えっ?」
見つめ合ったまま、芹花が唇を動かす。
「それでもいいの。」
ようやく瞬きをした芹花の瞳から、一粒の雫が落ちた。
「郁が誰を好きでもいいの。私じゃなくてもいいの。ただ…私はそんなことじゃ郁を諦めたりしないわ。そんな簡単な想いじゃないの。ずっとずっと好きだったから。」
瞬きをする度に雫が流れる。
やがて筋になる。
「報われないのに、何で好きでいるのよ…」
溜息混じりに私は呟いた。
「報われるために好きになったんじゃないわ。郁が郁だったから好きになったの。」
そうはっきり言い切った芹花は、小さく鼻を啜った。
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