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「言っとくけど、」
私はクッションから立ち上がった。
「芹花の気持ちは永遠に叶わないから。」
「郁が言うなら、そうかもね。」
芹花が自嘲めいた笑いを浮かべる。
そのまま私は部屋のドアに向かった。
「…早くそんな気持ち、捨てた方がいいよ。」
聞こえるか聞こえないかぐらいの声で囁く。
芹花は何も言わなかった。
私はゆっくりドアを開け、またゆっくりと閉める。
その途端、中から芹花の啜り泣きが聞こえてきた。
ドアにもたれかかった私は心の中で呟く。
芹花、ごめん。
でも私は、自分が好きな人を大切にしたいから。
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