霙から雪になる

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「朽ちたり消えたりする…だから綺麗なんですよ。」 そっと引き寄せ、巳悠さんを腕の中に抱き留める。 「日本人の美意識?」 「あはれ、ですか?」 ゆっくり腕を離し、テーブルにあるグラスに水を注ぐ。 それを一つ巳悠さんに渡す。 「そういうことじゃないですね、でも、」 半分まで飲み干し、グラスを置く。 そして巳悠さんを見つめる。 熱を持って、瞳を輝かせて。 「いつか人は気付くのかもしれないですよ…儚いことの尊さ、みたいなものを。」 再び窓辺に寄る。 さっきより冷たさが深くなった。 「想いだって…一時のものだから、儚いものだから大切に思えるんですよ。」
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