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賑やかな辺りとは違い、二人の間の空気は静かだった。
入れ代わり立ち代わりに人が移動するが、二人はじっとしたまま動かなかった。
でも、ちゃんと別れの時間はやって来る。
電光掲示板の表示が変わり、乗車予定の電車の表示が出た。
切符と同じオレンジ色の光が黒を背景に浮かび上がる。
「じゃ…もう行くね。」
そう言って荷物を持ち立ち上がる。
「…だめ。」
菫がぽつりと呟いた。
微動だにしない。
「菫…」
「…うそ。」
そう言ってすっと立ち上がり、待合室を出た。
後に続いて出て、菫を追いかけた。
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