3153人が本棚に入れています
本棚に追加
ずんずんと歩く菫を駆け足で追いかける。
着いた先は改札だった。
そこでぴたっと菫が止まった。
その横に並ぶ。
荷物を持ち直し、横の菫を見る。
何も言わない。
周りを、時間を気にして足早に歩く人が蠢く。
二人の時間だけが、距離だけが、動くことを拒否している。
「次は、いつ会える?」
静かに呟いた菫の声は、周りの音に掻き消されることなく、私の耳に届いた。
それが合図だったかのように、一斉に二人の時間と距離が動き始める。
辛い合図の言葉。
「…すぐに会えるよ。」
気休めでしかない言葉を返すことしかできない。
そんな言葉を期待してないことぐらい、分かっているのに。
最初のコメントを投稿しよう!