わがままなモーニングコール

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携帯を開けると、ぼんやりとした明かりが暗闇の部屋の中に浮かび上がった。 薄い緑のバックライトに照らされた、小さく行儀良く並ぶボタンを親指で叩く。 はっきりしない瞳が、見慣れた名前を探しだす。 伸びた爪が光に透けている。 通話ボタンを押し、携帯を耳にあてる。 堅くも軟らかくもない感触が、温かくも冷たくもなく伝わる。 数秒の間の後。 久しぶりに聞く、聞き慣れた声が響いた。 『…はい、』 「寝てた?」 『…まぁね。』 不機嫌でいて嬉しそうな、そんな声に聞こえた。 「明日も朝5時から?」 聞きながら、時計を探し覗き込む。 真夜中の12時をまわっている。
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