『あなた』

3/9
前へ
/375ページ
次へ
「潤さん、こっち!」 そう聞こえたと同時に、肩に指が触れた。 振り返ると、綺麗な笑みを浮かべた愛海がいた。 「愛海、」 「潤さん遅いから探してこいって言われて。」 愛海の短めの艶やかな黒髪が春の風になびく。 「ごめん。クラスの集まりが長くなって、」 申し訳なくなって言うと、愛海が首を横に振った。 「袴、似合ってますよ。やっぱり潤さんは青系ですね。」 そう言って、愛海は私の着ていた薄めの青緑の着物を優しく触った。 「こっちです、行きましょう。」 空いていた右手を掴まれ、引かれるように歩きだす。 愛海が手際よく人波を分ける。
/375ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3153人が本棚に入れています
本棚に追加