『あなた』

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「式典、どうでした?」 愛海が、引く手の指を自然と絡ませる。 愛海の指は温かかった。 「…ん、短くてさっぱりしてた。」 「変な感想ですね。」 小さく愛海が吹き出す。 「潤さんらしいけど、」 一瞬眩しそうに私を見上げた愛海が、指を強く握って放した。 「こっちですよ。もう皆いますからね。」 着物の袖に持ちかえた指が名残惜しい。 「…うん、」 素直に従い、集合場所の花壇前に向かった。 「潤、遅いっ!」 「何やってたよー!」 花壇前に着くなり、サークルの仲間が口々に不満を漏らした。 「ごめん、クラスの集まりが長くなって。」 同じ台詞を繰り返す。
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