quietism

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「初授業お疲れ様です、香芝先生。」 そう言われて、ぽんと肩を叩かれた。 はっとして見上げると、先輩教師の恩田先生がコーヒー片手に笑っていた。 「お疲れ様です…」 「緊張されました?これでも飲んで下さい。」 「ありがとうございます。」 両手を差出し、湯気立ち上るカップを受け取る。 甘味と苦味の調和が絶妙なコーヒーが口に広がる。 音楽準備室には私と恩田先生しかいなかった。 窓の外は朝から降り続く雨で、室内はやや冷えていた。 低めの雨音は好きな音色だから、私はコーヒーを飲みながら目を閉じ、雨音を聞いていた。 心の騒つきが収まる。 初めての授業を終えた緊張が解れていく。
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