quietism

3/21
前へ
/375ページ
次へ
「ふぅ、」 息を一つ吐き出して、目を開ける。 すると、こっちを見ていた恩田先生と目が合った。 「良かった。眠ってしまったのかと思いましたよ。」 「あっ、すみませんっ!」 慌てて謝ると、くすっと恩田先生が微笑んだ。 見られていたのかと思い、恥ずかしさが込み上げる。 「じゃあ私は次授業なので、」 「…はい。」 立ち上がり準備室を出ていく恩田先生を見送り、私は溜め息を洩らした。 新米教師の私の赴任先は、県内でも有数の進学校の高校だった。 生徒の殆どが大学進学を希望し、それを果たさせるのが教師の役目。 はっきり言って、音楽教師の地位は低い。
/375ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3153人が本棚に入れています
本棚に追加