quietism

4/21
前へ
/375ページ
次へ
初めての授業も、生徒達はただ授業を消化している、そんな雰囲気があった。 教科書を見つめるも、誰も耳を澄まして音を聴いてはいなかった。 私はそれが淋しかった。 純粋に音楽を楽しんでほしい。 それだけなのに。 「疲れるなぁ…。」 コーヒーを口に含む。 体に染み込む温かさが嬉しかった。 「香芝先生、お先に失礼しますね。」 恩田先生が頭を軽く下げて準備室を出ていった。 「お疲れ様でした。」 私は立ち上がり、深々と頭を下げた。 廊下を歩く足音が、やがて消えた。 椅子に座り直し、窓の外を見遣る。 雨はまだ止んでいない。
/375ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3153人が本棚に入れています
本棚に追加