quietism

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壁に掛けられた時計を見る。 帰宅するには早い時間を指していた。 「よし、」 私は机の抽き出しから楽譜を取出し、立ち上がった。 準備室の扉近くに設置された鍵箱から、《音楽室1》と書かれた鍵を取る。 それを握り締め、楽譜を持って準備室を出た。 がちゃりと鍵を開け、暗く湿った音楽室に入る。 音楽室独特の匂いがした。 ゆっくり息を吸い込む。 壁に掛けられた著名な音楽家達の肖像画。 ガラスケースに収められた楽器類。 湾曲した黒板とその前に置かれた黒光りしているピアノ。 窓に当たる雨粒は少し落ち着いてきている。
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