quietism

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どことなく後ろめたさを感じ、自然と忍び足になる。 「…って、もう学生じゃないんだよね。」 そう思って堂々と室内を歩きだす。 目当てのピアノに近付き、その体に触れる。 硬質な、滑らかな体。 鍵盤の蓋を開け、赤い布を取り去る。 楽譜立てに楽譜を差し込み、椅子に座る。 ペダルの調節をし、深呼吸をしながら指を鍵盤に置く。 息を吸い込むと同時に指を這わせ、鍵盤を撫でていく。 室内に耳慣れない、初めての校歌が響いた。 しばらく、一心不乱にピアノと向き合っていた。 最後の音を押し、ペダルから足を離す。
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