quietism

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「静かにして下さいと言ってるんです。」 明瞭な発音で、断固とした口調で女の子は言った。 そして私に近付いてくる。 「うるさかったのなら、謝ります。ごめんなさいね。」 素直に謝る。 胸元を見ると、3年を示す学年章が着けられていた。 「集中できないわよね。」 すぐに楽譜を片付け、鍵盤を拭き、布を被せた。 蓋も閉め、椅子から立ち上がる。 「帰るわ。音楽室閉めるから、あなたも出てもらえる?ええっと…」 「渡良瀬 幸です。」 「渡良瀬さん?」 どこかで聞いた名前だと思った。 「…あなた、私の授業を受けたわよね?」
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