quietism

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「受けましたよ、香芝先生。」 渡良瀬さんは、私の目の前で立ち止まった。 「もう少し、リラックスして授業なさればいいと思いましたよ。」 「どうせ誰も聞いていないから?」 驚いた表情を、渡良瀬さんが浮かべた。 「…鋭いですね。普通、初授業でそこまでは見抜けませんよ。」 「賢い人達ばかりだものね。」 渡良瀬さんがふっと笑った気がした。 「なかなか言いますね。」 じっと私を見据える。 「…面白い先生ですね、香芝先生。」 「誉め言葉だと思っておくわ。」 渡良瀬さんの横を擦り抜け、入り口に向かう。 「今日はもう弾かないから。」
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