quietism

13/21
前へ
/375ページ
次へ
一通りピアノを弾き終え、片付けを済ます。 ふと顔を上げると、鮮やかな夕焼けが沈んでいっていた。 窓に近寄る。 「…今日もうるさかった?」 私は音も立てずに入り口にいた渡良瀬さんに声をかけた。 窓に薄く映っている。 「…。」 「もう部屋閉めるけど、」 振り返り、渡良瀬さんに向かって歩きだす。 「何かあるのなら準備室にいらっしゃい?コーヒーなら出せるから。」 どうしてかそう言ってしまった。 多分、不安そうな顔を彼女がしていたから。 春らしくない、沈んだ顔。 似付かわしくない―…そう思った。 「おいで。」
/375ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3153人が本棚に入れています
本棚に追加