quietism

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「…鋭いですね。」 「昨日のあなたが本当のあなたなら、誰だって分かるわ。こんなに元気ない表情してるんだから。」 そう言った途端、カップから顔を上げた渡良瀬さんは、強い瞳で私を見た。 「…新任教師のくせに。」 「ちょっ…!そんな生意気言って。」 「ふふっ」 あっ、笑った。 「ねぇ、渡良瀬さん。私は気楽な音楽教師だから、いつでもここにいるわ。カウンセラーや心理専門家じゃないから、あなたの心の傷や悩みなんかを治せはしないけど…いるから、ここに。」 合わさった視線を逸らなさいように、しっかりと告げる。 《当たる光が強いなら、その影も濃い。》 そう言ったのは誰だったろう?
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