quietism

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「…煩いんです、最近。」 思い出したように渡良瀬さんが切り出した。 「頭の中に虫がいるみたいで。何かがずっと鳴いているような囁いているような…そんな日が続いているんです。」 渡良瀬さんがふっと瞳を伏せた。 「香芝先生に初めて会った放課後はひどかった…友達との約束も断って、教室にいたんです。」 時折、指先でこめかみを小さく押さえる。 「じっとしていたら収まるだろう…そう思った矢先に音楽室からピアノの音がして、苛立って。」 ゆっくり開けた瞳に夕陽が映り込む。 私を見つめる。 「一言、と思って音楽室に向かいました。」
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