quietism

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「扉を開けたら、新任教師が一心にピアノを弾いていた…はっとしました。」 渡良瀬さんが少し笑う。 「その後ろ姿に、一言も何も言えないなと…“ああ、この人は煩くなんかないんだ。きっと性能のいい耳を持っている。自分のことに、音に集中できる、そんな人なんだ。”と思いました。」 私は驚いて、彼女をまじまじと見つめた。 「…私の周りは騒音だらけ。大学はどこ行くの、将来はどこで働くの、どこまで上り詰めるの…そんなことばっかりで嫌なんです。」 カップをテーブルに起き、彼女は手で顔を覆った。 「煩い、煩い、煩い…」
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