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「肝心なこと…?」
「そう。」
私は渡良瀬さんに近付き、そっと隣に座った。
「あなたに聴いてほしい音はもっと違うものよ。」
渡良瀬さんはじっと私を見つめた。
私も見つめ返す。
強い光が宿る瞳。
「あなたの歳で聴いていてほしい音があるの。あなたの歳でしか聴くことのできない音があるの。」
渡良瀬さんは首を傾げる。
「今しか聴けない音、」
「…大丈夫、あなたも性能のいい耳を持っているから。すぐに分かるわ。」
私は渡良瀬さんの肩を軽く叩いた。
「さぁ、今日は遅くなったらから。帰りましょう。」
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