男 と 女

7/10
前へ
/375ページ
次へ
「うん、テストも終わったし。暫く帰ってなかったから。」 見上げる格好になって、私は新に話した。 新が見下ろす。 ぴしりとした細い眼鏡の奥の、綺麗な二重が優しく緩む。 「ふぅん。俺も久々に帰るよ。」 「そうなの?」 「ひとりは楽だろ、だって?」 答えに窮する質問をぶつけるのは、新の昔からの癖だ。 「新って、変わらないね。」 「そうか?」 くすくすふたりで笑い合う。 電車は海に突き出した半島を走っている。 太陽は傾きつつあり、海の色も刻々と変化していく。 「…予定とか、決めてんの?」 「んー、あんまり。」 「温って、仲良かったの春田だっけ?」
/375ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3153人が本棚に入れています
本棚に追加