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「うん、テストも終わったし。暫く帰ってなかったから。」
見上げる格好になって、私は新に話した。
新が見下ろす。
ぴしりとした細い眼鏡の奥の、綺麗な二重が優しく緩む。
「ふぅん。俺も久々に帰るよ。」
「そうなの?」
「ひとりは楽だろ、だって?」
答えに窮する質問をぶつけるのは、新の昔からの癖だ。
「新って、変わらないね。」
「そうか?」
くすくすふたりで笑い合う。
電車は海に突き出した半島を走っている。
太陽は傾きつつあり、海の色も刻々と変化していく。
「…予定とか、決めてんの?」
「んー、あんまり。」
「温って、仲良かったの春田だっけ?」
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