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君が掛け替えのない存在であることは紛れもない事実であり、そのことを疑問視することは僕の自己内面を自ら否定することに近い。
君には話しただろうか、僕の事を。
僕は小学校入学から親の離婚の関係で親戚の家に預けられていた。
普通なら親が近くにいないということが不幸に思われるかもしれないが、実際は親元にいるより幸せだった。
親といた思い出といえば飛びかう暴言と食器くらいだろうか。
はっきり言って親の顔なんてボンヤリとしか覚えていない。
今、目の前に父親だと名乗り出る人間がいれば、僕はそれを父親なんだと思うだけで、それ以上でもそれ以下でもない。
それに比べて預けられた親戚はそれまでとは別世界だった。
洞窟の生活からいきない文明社会に投げ出されたような感覚だ。
そこには恵まれた衣服があり、住まいがあり、食事があった。
汚い言葉からは完全に関係のない場所であった。
僕はその生活のなかで幸せに生活が出来たんだ。黙っていても食事が出てきて、要求すれば服や嗜好品が手に入る。
まるで王様になったようだった。
その中で僕は強く思うようになった。生きる事には不公平が常につきまとうのだと。
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