ワタクシ様が〝三蔵法師〟だ!

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 「居たぞ!妖怪共だ!」  いまいち締まらない名乗り上げの直後、叫び声と共に何人もの男衆がなだれ込んできた。村の人間である  「法師様が、やってくれたぞ!皆続けぇ!」  殺せ!  女達を取り返せ!  村に平和を  あっという間の出来事だった。殺気立った村人達は動けなくなった妖怪を虐殺していく  「……村長殿、これはどういう事だ?」  呆気にとられていた三蔵は小走りで近づいて来た村長を問いただす  「いやいやいや、助かりました三蔵法師様。我々も微力ながらお手伝いしますぞ!」  「誰がそんな事を頼んだ!」  激怒する三蔵法師。しかし村長は怯まず嫌らしい笑みを浮かべた  「いやいや、村の問題ですからねぇ。貴女方に任せきりという訳にもいかんでしょう?」  「けっ!よく言うぜ」  「どの口が…」  吐き捨てるゴクウ。言葉に詰まる三蔵法師。他の二人も不快に顔を歪める  それとも、と村長は続ける  「まさか凶悪な妖怪を逃がす、なんて事はありますまい。〝三蔵法師様〟?」  「……ハ、」  それまで黙っていたリーダーの男が短く笑う  視線の先は殺されていく同胞、その顔には諦観だけだった  (あーあ、結局こうなるわけかヨ)  「おい、貴様」  と、三蔵法師が男の胸倉を掴み上げる  「何を諦めている?」  「……あんたらには適わねーヨ。ロクに動けもしねぇし、さっさとくたばった方が楽だろ」  「馬鹿者が!!!」  丘に響き渡る程の声。怒り心頭の表情の中に、悲しみが一握りあるのはどういう事だろうか  「この私様に立ち向かった程の男が、簡単に諦めてどうする!」  「いやいや、法師様何を」  「お前は黙ってろ!いいか、貴様は今生きているんだろうが!潔くなんてあろうとするな、足掻け!」  「…訳わかんねぇ。どうしろっていうのヨ」  そこに割り込む三人  「てめぇで考えろ」  「ハニーは厳しいね…んで、怖ろしく優しいよ」  「二人とも黙って拝聴しましょう」  「逃げるなら逃げろ。依頼は、『此処から貴様等を居なくする』だけだ」
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