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ゴジョウ、ハッカイは油断していた。
三蔵法師は反応出来なかった。
動けたのはゴクウだけ。反射的に突き出した如意棒は男の腹を突き破っていた
「……つえぇな、ガキ。ソンゴクウだっけか?」
「…応よ」
三蔵法師は呆然としていた
かわいい顔もするんだな、と男は思う
(そんな事思うとは、マジで惚れちまったかナ)
「何で…」
「逃げなかったって?」
男は血を吐きながらも笑ってみせる
「やだね。何で、お前の思い通りにしなきゃいけねぇのヨ」
(情けない姿見せたくなかったなんて言えねぇナ)
男の真意を知ってか知らずか、三蔵法師は苦悶の表情を浮かべる
「おいソンゴクウ。こんな、死に方した俺、は馬鹿かヨ」
「馬鹿だろ。でもアンタは我を貫いて生きたんだ。そりゃ、妖怪として最高だ」
ゴクウの言葉に男はまんざらでもなさそうに笑う
「…だそうだ。そんな顔すんなヨ、三蔵法師」
「お前は…」
三蔵法師は男の目を真っ直ぐ視て聴く
「お前は精一杯生きたのか?」
ニヤリと普段通りに笑う
「好き勝手に生きてきた。思い残しが無いほどにナ」
(欲を言えばもっと早くアンタに出会いたかったけどナ)
「なら、いい」
男の言葉に納得したか、三蔵法師は形だけでも笑顔を浮かべてみせた
「おい。名前を教えてけ」
ゴクウが尋ねる
「へっ。大した名じゃ、ないがナ…俺の名は――」
「覚えておく」
三蔵法師の言葉に満足したのか、男は遂に膝を折る
「ハァ、ハァ…おいお前ら、人間共」
ビクッと、沈黙していた村長が震える。
「やるじゃねーカ」
「な、に?」
一瞬、予想に反した言葉に理解が及ばなかったようだ。呆けた顔で男を見返す。
そして、一際長く息を吐き、男は動かなくなる。そして、身体に亀裂が入り崩れてゆく。
妖怪は死ぬと大地に還っていくのだ
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