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時は現代より遠い昔の、天、神、仏の奇跡が近く魑魅魍魎、悪鬼悪霊、妖が猛威を振るっていた時代。東方である四人組の一行が旅をしておった。
「この先の樹海に妖怪の縄張りがあるようです。妖気を感じます」
一行の1人、少し痩せ型の青年がそれを感じとった。
「どうする?迂回するか?」
別の1人、ニヒルな笑みが印象的な青年が、一行で唯一馬に跨っている人物に尋ねた
「何ビビってんだよ!」
だが応えたのは一番前を歩いていた童である。
「どこぞの妖怪なんかぶっ飛ばしてやるよ。こんな旅さっさと終わらせたいんだ、俺は」
血気盛んな性格で、口が悪く乱暴者である事が伺えるものだ
「…アナタはこの旅を何だと思っているのですか」
「ふっ。相変わらず単細胞だな」
先の2人に飽きられ口調で言われ、童の頭の血が沸点まで達した。
「上等だ。バカにしやがってぶっ飛ばす!」
「お前がバカだからだ」
それまで静観していた最後の1人が辛辣に言い放ち、経を唱えた
「いだだだ!頭が割れる!」
瞬間、童が頭を抑えて転げ回る。
「少しはバカも治ったか?」
「…このアマぁ」
怨恨のこもった眼で睨み付けるが痛みの余韻で動けないようだ。睨まれた方は動じる事もなくその視線を受け止めていた。
「立場を弁えろ。ゴクウ」
「…ちっ」
ゴクウと呼ばれた童は不機嫌そうに目線を逸す
「お前もだ。一々相手にするな。ハッカイ」
「悪いな。相手にしてあげねぇと、このバカ寂しがると思ってね」
ハッカイと呼ばれた青年は、ニヒルな笑みをさらに深めおどけて返した
「それと分かりきった事を聞くな。ゴジョウ」
「申し訳ありませんでした」
ゴジョウと呼ばれた痩せ型の青年は深々と謝罪した
「森は迂回する」
「てめえもビビってんのか!?サンゾウ!」
「…戯け」
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