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「さあさあ、よくぞいらっしゃいました法師様」
「このような夜分に申し訳ありません。雨風を凌げれば何処でも構いません。休める所などありますか?」
それはまさに〝聖人〟を絵に描いたような優しい笑みだった
「いえいえいえ!かの〝三蔵法師様〟に粗相があってはなりません。直ぐに一番良い部屋をご用意致します!」
三蔵は柔らかく微笑んだ
「ありがとうございます。折角のご好意。甘えさせていただきます」
「いや、ダレだよお前」
ゴクウの突っ込みはひとまずスルー。先程の男、村の代表者の姿が見えなくなってから鉄拳が飛んだ。
「絶世の美少女〝三蔵法師様〟だ。文句があるのかサル」
「ざっけんな!二面性妖怪が!ただのサギじゃねぇか」
「はん。これだからガキは。私様が何か嘘をついたか?」
「む……」
「この美貌をどう使おうと私様の勝手だろう?わかったならいくぞ」
話を切り上げ、さっさと歩きだした。
「…なんつー奴だ」
「そこもハニーの好いところってね」
「世の中を円滑にする為の素晴らしい考え、流石です。三蔵様」
「お前らもたいがいだな!」
「なっとくいかねー」
翌朝、豪華な料理に囲まれた朝食でゴクウは開口一番に不満を吐き出した
「まだ言ってるのですか。ゴクウ」
「ほっとけよ。三人部屋で文句言ってた割には、一番早く寝てた坊やなんてな」
「う、うっせーよ!ハッカイだって夜中ブゴブゴ鼾がうるせーし、ゴジョウは朝早過ぎだろ……日が昇る前って」
「早起きは三文の得なんですけどねぇ」
「なんだよ。口答えすんな!やかましい」
その顔に直撃するお椀。ゴクウが倒れる程の容赦のない勢いであった
「お前が一番やかましい」
「……サンゾウ。テメェ」
ゆっくりと起き上がりながら睨みつける 「そもそも、なんでテメェだけ一人部屋なんだよ!何様だこら」
「三蔵法師様だ」
ばっさりと切り捨て、冷たい目でゴクウを見下すサンゾウであった
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