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「――」
術が完成した。そして錫杖を地面に打ち下ろす、しゃらんという音を奏で陣が浮かび上がり、三蔵法師を照らす。
刹那の後、放たれた波動が辺りを白に埋め尽くす
「ぐっ…」
リーダーの男は何とか耐えたようだが、彼の部下は次々と膝から崩れ落ちる
「何、だ…いまの…はヨ」
「よく耐えた。よし教えてやろう」
さっと法衣を翻し、男に近づく。心なしか嬉しそうに
「今のは私様が所有してる経文、〝魔天経文〟の力よ」
「経文だ、と?」
「そう。その中の浸透系の術。特定の相手に直接霊力をぶつける技。ま、私様位しか扱えないだろうがな!」
この人数を打ちのめす霊力、味方だけを外した精密さ只の一撃で圧倒的な力を魅せつけた
「んなもん…持ってるようには見えなけどナ」
男の言うように、三蔵法師には経文の巻物など見当たらない
「ん?ああ、経文なら私様の内にある」
言い切る三蔵法師にゴジョウが補足する
「常人では、読んだだけで魂を侵食されると云われる『経文』それを内包せし者が、このお方ですよ」
「そんな物騒なもんを収集するのが、ハニーとオレ達の目的だっけか?」
「俺様が知るか!」
「…二人共、旅の目的位把握しといて下さい」
チグハグで、凸凹なこの一行。先は大丈夫なのだろうか
男は無意識に呟いていた。聞かずにはいられなかったようだ
「…お前ら、一体何もんなんだヨ」
その言葉に三蔵法師は一瞬キョトンとしたが、すぐに不敵な笑みを浮かべる
「なんだ…知っているのでは無いのか?なら教えといてやろう。お前達!」
しゃらんと錫杖を打ち鳴らし、やはり尊大に言い放つ
「命令すんな!でも聴けよく聞けもっかいきけ!俺様は地上最強の妖怪、〝ソンゴクウ〟!」
腕を組み、自らをそうと疑わず
しゃらん
「三蔵様の忠実なる僕、流れを読むのが得意な水妖〝サゴジョウ〟です」
軽くお辞儀をしながら、簡潔に慇懃な態度を崩さず、されど気は抜かず
しゃらん
「オレは〝チョハッカイ〟色気と男気担当のナイスガイ!」
気取った笑みはしかし様になって、軽いノリだが、眼光の鋭さとその内に秘めた意志は強く、ただの格好付けにあらず
しゃらん
「そして私様!超絶なる美貌を持ち、絶大な霊力を秘め、類い希なる頭脳を授かった完璧なる者〝三蔵法師〟人呼んで」
しゃらん!
「私様一行!!」
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