競馬場

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ドドドドド・・・ドっ 目前を十数頭の馬が一団となり、砂を巻き上げながら駆け抜けた。 「いけぇ~‼差せぇ~‼」 大きな声で叫んだ。 しかし馬の足音と、周囲にいる人間の同じような叫びによって、俺の声は掻き消される。 「5番差せぇ~‼」 「あっ💦」 「バカっ💦」 「8番は来なくてイイんだよ💦」 「バカっ💦」 「やめろ‼・・・来るな‼」 「来るなぁ~💦」 「来ないでくれぇ~💦」 「・・・・・・」 「あぁ~ぁ⤵バカヤロ~💢ふざけんなっ💢」 俺は上着のポケットから荒々しく馬券を取り出し、強く握りしめたと同時に地面に叩きつけた。 「くっそぉ~💢イライラする💢」 「なんだよ、あの8番💢」 そう言って、持ってた競馬新聞を拡げ、8番の馬名を2度3度と人差し指で激しく弾いた。 「あの8番さえ来なければ、今頃は・・・。」 「くそ~っ💢」 「次のレースで、絶対取り返してやる‼」 俺はズボンのポケットに手を突っ込み、そして中を探った。 チャリン 出てきたのは500円玉が一枚と10円玉が2枚だけ。 「あれっ⁉」 俺は慌てて再度、全てのポケットに手を突っ込んだ。 しかしいくら探しても、何も出てこない。 つまり、この520円が俺の全財産だった。 俺は頭の先から血の気がスゥーッと引いていくのを感じた。 「あっちゃ~っ💧」 「またやってしまった💧⤵」 いつもこうだ。
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