競馬場

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俺にとって競馬場は、一獲千金を狙う真剣勝負の場だ。 大金を得て、今の自分とおさらばしたいと常に思っている。 俺が競馬を始めた頃の競馬場は、そういった親父達が集まる場所だった。 競馬場の何処を見ても、ハズレ馬券と競馬新聞がゴミとして散乱し、ベンチには昼間から酔い潰れた親父が倒れ込むようにして寝ていて、決して環境面・教育面で誉められる場所ではなかった。 しかし、レースになると親父達が目をギラつかせ、欲をあらわにしているそんな姿が、何故か俺は好きだった。 ところがどうだ・・・ 今の競馬場は・・・・ 清掃員達が競い合うかのようにゴミを拾い集めていて、あれほど散乱していたゴミのハズレ馬券や競馬新聞が競馬場から消えた。 更に、観客席には椅子の他に青々とした芝を張り、女・子供が喜ぶイベントが開催されるようになった。 その為、競馬場はレジャーランド化し、家族で楽しむ場所に様変わりしてしまった。 当然、目をギラつかせていた親父達は、今ではすっかり身を潜めてしまった。 だから俺は聖域を子供や家族連れによって侵されている・・・そう思っていた。
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