女の子

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ほんの一瞬の出来事だったが、俺は全身に何十㌔かのリュックを背負った時のような重みを感じた。 母親が登場してから、俺は緊張し、ずっと肩に力が入っていたからだ。 別に母親が俺のタイプで、ドキドキしていたわけではない。 実は・・・・ 俺は、自分以外の人間が怖くてしかたがない。 何故だかわからない。 物心がついた時から、既にそうだった。 たとえば、心の中では、 「ふざけるな‼」 って思っていても、直接その相手に言ったり、感情をあらわにしたりすることはない。 先程と同じように、視線を反らし、ただジ~っと俺に降り懸かる困難が過ぎ去るのを待つ。 当然、ストレスが溜まる。 だから、誰もいない場所を見つけて、ブツブツと悪口を言いながら物に八つ当たりしたり、最近だとロールプレイングゲームの主人公に相手の名前を入力し、武器・防具を身につけずバトルしてゲームオーバーになっていく様を楽しむなんてことをしている。 あとストレスを溜めない為に、俺自身がなるべく他人との交流を避けて生きてきた。 完全な“内弁慶”なんだと思う。 ところが・・・・ よく考えると、先程の優と呼ばれていた女の子に対してだけ、俺が睨んだり、殴ろうとしていたことに気付いた。  たぶん、俺が初めて他人に感情を見せた瞬間だったと思う。 しかし俺にとって、そのことはそんなに重要なことではなかった。 俺は深く考えることなく、まだ多くの人々で盛り上がる競馬場をあとにした。 この出会いが、後の人生に大きく関わってくることを知らずに・・・・
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