雨の日

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「傘もお返しします」 『良いけど、そしたら君の傘は?』 「あっ…」 『まだ借りていなさい』  彼は笑い僕に傘を渡した。  彼と話していると雨の日以外は原付で会社に通勤していて、雨の日はバスに乗ると聞いた。 「また雨の日に会えますか?」  僕は雨の日が楽しみになっていた、彼に会えるからなのだろうか?  でも梅雨の終りを感じる雨の日に僕は彼から悲しい言葉を聞いた。 『7月に転勤が決まったんだ』 「会えなくなるんですか?」  僕は動揺した。彼の転勤は、やりたい仕事が出来るチャンスで喜ぶべきなのに。 『君と会えなくなるのは寂しいね』  彼は苦笑して僕に言った。 「…聞いていいですか?初めて会った日、何故僕に傘を?」  彼は困った顔をした、聞いてはいけなかったのだろうか?
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