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『バスから降りて雨の中歩こうとする君を捕まえ雨宿りをさせようと思っただけだったんだ、田舎だからね此処は。…でも傘を渡せば、また会えると思ったんだ』
「また会えると?」
『そう…俺はね』
次の言葉に僕は戸惑った。
《振り返った時の君に一目惚れしたんだ》
僕はうつ向き顔を隠した、何か言わなきゃと思っても何も言葉が出てこない。
『…それじゃ俺は帰るよ。好きになってゴメン』
頭に触れた彼の手は優しくて暖かくて…心地よかった。
あれから僕は彼に会うことは出来ず7月になった。
彼は僕の為に会わないことを選んだのだろうか?学生の僕は子供で彼との最後の日、自分の気持ちが分からなかった。
「今なら言えるよ、僕も彼方が好きだった。彼方に今会いたい…」
僕は彼から借りたままの傘を見つめ泣いた。
あの日気持ちを伝えていたら今が変わっていたのだろうか?
今も好きが恋なのかは分からない、もしかしたら兄のように慕っている好きなのかもしれない。
いつか彼方に再び出会えたら答えが見付かれば伝えよう。
雨の日の出会いを僕は忘れない。
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