雨は涙

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雨は涙

 あの日、君はバスから降りると溜め息をついて数㎞先の住宅街に向かおうとしていた。  田舎に住む誰もが雨宿りを選ぶはずだが、君は制服に鞄を入れ歩き出した。 「おいっ!そこのチビ」  チビはマズかったかな?と思いながらも俺は君の腕を掴んだんだ。  振り返った君は驚いた顔をしていたが、俺は君の顔を見て昔を思い出し自分の傘を差し出していた。  俺はどんな表情をしていたんだろうか? 「傘を貸したら俺が帰れないだろうが」  バス停のベンチに座り馬鹿だろうと思いながらも考えていた。 「…まさかな。似てるからって相手は男だろ」  昔 好きだった歳上の女性が近所に住んでいたが、女性は風邪を拗らせ亡くなった。  それから俺は雨の日が嫌いだ。
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