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「あはっ! あんた顔真っ赤じゃない。もしかして、お姉さんのプロポーションに悩殺されちゃったのかな?」
「違いますっ!!」
(まったく……なんて見当違いなことを言う人だ! ……でも、よく見ると、出るところは出て引っ込むところは引っ込んだ、いわゆるボンキュボンな体型をしているな……ってイヤイヤイヤ、僕は何を見ているんだ!)
スタイルのよいブロンドの女性は、よく手入れされたその長い髪を妖艶にかきあげながら、少年のことをニヤけた顔で見ている。
「──?!」
女性のその挙動から、少年は何だか心の中を見透かされたような気がした。
少年の顔は、さっきとは別の意味で更に熱を帯びていく。
そのせいか、ついさっきまであった怒りが嘘のように冷めてしまったことに、少年は気がついた。
先ほどの怒りに代わってだんだんと気恥ずかしさが込み上げてきて、少年はややぎこちない動作で鞄を拾いあげると、その場を立ち去ろうとする。
「とと、とにかく! 僕は学校があるんで、それじゃ!」
「あれ? そういえばあなた、さっきまでメガネ着けてなかったかしら?」
少年はハッとして、自分の目元に手をやった。
どうやら、ブロンドの女性に言われて初めて気がついた様子。
(もしかして、さっき飛びのいた時に、どこかに飛んでいっちゃったのかな?)
「……えーっと、どこに落ちたんだろう……」
少年は、ぼやけた焦点できらきらと輝く雪と氷の世界の中、失くしてしまったメガネを一生懸命に探し始めた。
が、それは思いのほかすぐに発見された。
車の下で。しかもタイヤの──
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