バス停にて

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ある日、僕達は出かける約束をしてバス停で待ち合わせをしていた。 ところが当日、僕は寝坊をしてしまい、目的地集合ということになって、一人遅れて行くことになってしまった。 ♪~ 友達から電話がかかってきた。 からかわれるのは目に見えていたがそれでも遅れてしまったのだから出ないわけにもいかない。 「もしもし。」 「お~、珍しいな寝坊なんて。」 ヘラヘラと笑いながら友人が電話をかけてきた。 「悪かったよ。お前ら一つ前のバスに乗ったのか?」 「あぁそうだよ。」 電話をしながら、時刻表を確認する。 「お前らもう着いたのか?」 「え?まだバスの中だけど?」 「随分ゆっくりしてるな、そのバス。」 今から40分前にバスが出ている。 目的地には20分で着くので大分遅いということになる。 「おいおい40分前のバスなのにまだ着かないのかよ。」 「何言ってんだよ。俺らは20分前のバスに乗ったんだよ。」 「え?」 もう一度時刻表を確認する。 しかしそこには40分前のバスしか記されていない。 「時刻表にはのってないぞ?」 「さぁ?遅れてたんじゃないか?」 なるほどそれなら合点が行く。 電話越しに友人達の笑い声が聞こえる。 「お客様、乗車中の電話はご遠慮ください。」 「怒られたじゃねぇか。」 少し小声になって友人は言う。 「はいはい。」 電話をかけてきたのはお前だろ、と言いたかったが我慢する。 電話を切るとちょうどバスが到着した。 「あいつら待ってるだろうな。」 バスの中でそう思っていた。 目的地には着いた。 でも友人は一人もいなかった。 「ったく、あいつら。」 どうせ隠れてニヤニヤしてるに違いない。 電話をかける。 「もしもし。」 電話には見知らぬ男が出た。 「申し訳ありません。お客様は喋ることができなくなりましたので代わりに出ました。」 何言ってるんだ?こいつ。 「それでは、失礼いたします。」 プツ 電話は切られてしまった。 「なんなんだよ、全く。」 他の友人に電話をするがかからない。 その後、誰にも会うことなく一日は過ぎてしまった。 そして翌日のニュースで、友人が喉を切られて死んだことを知った。 事実を知ってショックを受けると同時に考えてしまった。 あの時電話に出たのは・・・ 誰だったんだ? 「皆様、乗車中の携帯電話の使用はご遠慮ください。」 今日も時刻表にのっていないバスはどこかを走っている。
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