魔法

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魔法

僕の彼女が死んだ。 元々身体の弱かった彼女は病気がどうしようもないところまで進行していた。 彼女はそのことを僕に黙っていた。 「ごめんね。」 最後の言葉が謝罪の言葉だった。 何言ってるんだよ。 違うだろ。 そんな言葉はいらないよ。 だから変わりに言ってあげた。 もう喋れなくなった彼女の耳元で、 「愛している。」 彼女は何かを言おうとしていた。 しかし、病気はそれをさせなかった。 それでも、わかった。 「ありがとう。」 確かに、そう言った。 彼女は笑顔のまま、息を引き取った。 数日後。 彼女の葬儀も終わり、荷物を整理している。 ふと彼女の荷物の中に妙な紙切れを見つけた。 ついつい、その紙に書いてある内容を読んでしまった。 「消し去ってください。」 文面はこの言葉から始まった。 「彼に起こる悲しい出来事を、全て消し去ってください。」 文面はそこで終わっていた。 そこからは何か呪文のようなものが描かれていた。 「全然、効果ないじゃん。」 自然涙が流れ出す。 「君が死んだら、悲しいに決まってるじゃないか。泣きたくなるに決まってるじゃないか。」 そこでようやくあの時の言葉の意味がわかった。 「ごめんなさい。」 ああ・・・そうか、だから謝ったのか。 「馬鹿。こんなもん意味ないに決まってるじゃないかよ。」 泣きながら、その紙を握り締めた。
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