その女、美那岸 歩

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「あああああああああああああああああああっ!!!!」 「えっ?ひぇっ!?」 叫び狂った怒号をホームに響かせながら。歩は勢い良く不良に襲いかかった。 歩の一打目は威嚇。それは相手の戦意を完全に無くし反抗される事なく。事を進める為の威嚇。 大体の相手はこの威嚇で戦意を失い。その後、徹底的に歩に殴られる。 そして、この不良も例外なく。初手の威嚇で完全に戦意を無くしていた。 “威嚇”と言ったが、それは威嚇にはあまりに強烈すぎるモノである。 彼女の威嚇は言ってしまえば単純な事。相手の急所近くを思いっきり殴るか蹴るだけだ。ただ、ソレが半端ない。 何故なら外されたソレが当たった場所は、激しく破損。ひび割れ。グシャグシャになっているからである。 正常な人間から見れば、ソレは異常な光景。 しかも、ソレをわずか数㎝の場所で目撃すれば心も折れるというもの。 不良は悟った。自分はこの女に殺されると。 そう悟った時。彼女のソレは不良に振り下ろされた。 パッッンッッ!!!! 激痛が走る。ジンジンと痛む。しかし、ソレを感じていたのは不良ではなく。先ほど無関心に二人のやり取りを眺めていた。ため息の男の右手だった。
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