その男、雪白 幸喜

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朝が来る度に男の気分は憂鬱になる。 今の時刻は朝の5時半。 窓から見える外は夕闇に照らされ、秒秒事に明るさを増していく。 そんな光景をため息を吐きながら。瞼(まぶた)半分閉じかけた顔をして眺めている男がいる。 彼の名前は幸喜。フルネームは雪白幸喜(ユキシロ コウキ)。 名前は全ての幸せを集結した様な名前だが、本人は至って幸せなどではない。 寧ろ幸せなど感じた事があったであろうか。 てか、幸喜にそんな感情があるのか。そう疑いたくなる程にこの男は全てに無関心なのである。 「幸喜ぃ~?起きてるぅ~?」 部屋の外から自分を呼ぶ声に反応をしめしたのは、声の主が部屋を二度三度ノックし。最終的にドアを蹴破(けやぶ)ってからである。 「…姉さんおはようございます」 「…幸喜。…起きてんなら返事しなさいよ?心配するじゃない」 そう言ってドアを蹴破り部屋の中に入ってきた姉。名前は十美(カズミ)は、そのまま未だ布団から下りず。何事もなかったかの様に姉を見る幸喜に近づき。抱きついた。 この姉。極度のブラコンである。 「おはよぅ~幸喜ぃ~♪」 「はい」 弟が抵抗しないのをいいことに、姉は幸喜の顔にべったりくっつき頬擦りをした。
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