その男、雪白 幸喜

3/10
前へ
/221ページ
次へ
あれから姉に数分間。幸喜は、ただ黙ってされるがままに頬擦りされていた。 ほっとけば永遠に頬擦りされるので。幸喜は大体、2、3分位頬擦りさせて。『着替えるから』と自然に姉を自分から離す。その度に十美は『もうちょっとだけ』とダダをこねるが、幸喜がごめんねと言えば素直に従うのだ。 姉が部屋を出ると。幸喜は蹴破られ、床に倒れたままのドアをさっきまでドアが閉じていた入り口に立掛けた。そしてすぐに寝間着を脱ぎ、タンスから着替えを取り出し。淡々と着替えを済ませていった。 着替えが終わり。顔を洗いに洗面所に向かうと。途中、台所で朝食を作っている十美に呼び止められた。 「幸喜?洗面所に行くの?」 「うん。そうだけど…それが?」 幸喜が返事をすると、台所から十美の手だけが現れ。そしてその手には何かが握られていた。何かと幸喜が確認するよりも先に、十美はその握った何かを幸喜に向かって投げ渡してきた。 おっとと受け取り、何かと受け取った物を確認すると。それは真新しい歯磨き粉だった。 「さっき私が使ったらちょうど切れちゃってさ。それ昨日買った新品♪」 「うん。…ありがとうございます姉さん」
/221ページ

最初のコメントを投稿しよう!

316人が本棚に入れています
本棚に追加