その男、雪白 幸喜

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「おはよう!」 「…どうも」 駅のコンビニで。乗る電車が来るまでの暇潰しをしている幸喜に元気よく挨拶するこの女性。名前は香。フルネームは松木香(マツキ カオリ)。 幸喜とは小学校からの古い付き合いの幼なじみである。 香は今日も眠たげな顔をしている幸喜に『今日も冴えない顔してるね君は?』と言いながら。近寄ってきた。 幸喜はと言うと、『はあ、そうですね』と愛敬なく言葉を返し。直ぐに今立ち読みしていた雑誌に目線を戻した。 この二人は昔っからこんな感じである。 香が一人で喋り。幸喜はそれに軽い相槌(あいづち)をする。 どう見ても気など合いそうにないこの二人だが、何故か互いに嫌がる事もなく。数えれば十年以上の付き合いになっていた。 「あっ!?ライムライトだ!!」 「そうですね」 幸喜の読んでいた某テレビ雑誌に、今人気上昇中のドラマ『ライムライトの放課後~わたしたちの川島くん~』を見つけた香は、幸喜に引っ付きそのページをニコニコした表情で見ていた。 「…好き何ですか?」 「え?」 「ライムライト」 「まね。乙女のたしなみですから♪」 そうですかと幸喜は言い。目線をライムライトの載っているページに移した。
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