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「1.200円だ!」
『えっ?何?』
「1.200円だっ!!」
先ほど調べデジタル万引きしたCDの値段を力強く伝えると、またしても相手の返事も待たずに電話を切った。
前には各駅停車の電車。
彼女はマナーはしっかり守るのだ。
まあ、マナー云々関係無しに。今の電話の相手には毎度同じ態度であるがな。
プシュッと扉は自動で開き。開放された車内へ入る歩。うまい事に席は空いていた。しかし、歩は席には座らずに彼女は“いつもの指定場”に寄りかかった。
電車二番車両の真ん中扉左寄り。
そこが彼女の指定場。
別に、外が見たいわけでも、筋肉トレーニングってわけでもない。
ただ何となくこれまで一年と一月。ここに立っているだけである。
本人としてはさしてこだわっているわけではないが。
気付けばそこが指定場になっていただけである。
そして、今日もいつもの指定場で電車が出るのを待っていると。誰かが自分を呼んでいる事に気が付いた。
「オッハよ!」
「うぜぇ」
「朝から毒吐くなよ!?」
ソイツは山岸悠(ヤマギシ ユウ)。
歩の幼なじみで男友達だ。
まあ、友達とは歩は思っていないらしいが。悠は気にしてはいない。そういう男だ。
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