その女、美那岸 歩

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「…はぁ」 ため息を吐く男がいた。 外見はそれなりに良く。身長は175~176㎝ぐらいだろう。 揺れる車内。 ガタゴトと鳴る線路の騒音。 隣の車両からはやたらと怒鳴り声のような音が聞こえてくる。 ため息をつく男以外の乗車客は、野次馬心で隣の車両を我は我はと覗いている。 しかし、そのため息男はそんな騒ぎ何か聞こえて無いかと。疑いたくなるくらいに無関心な顔をしていた。 一度だけ、隣の車両に目をやると。一瞬、人が浮いた様に見えた。 これが普通の人ならば『何事かな?』と、好奇心を膨らませるのだが。この男にそれはまったく無い。 まるで風景でも眺めてるかの様にソレを見ると。またため息を一つ。 そして、視線を外の写る窓に戻し。下りる駅が近づいてる事を確認すると、床においといたカバンを肩にかけ。 電車から下りる支度をもそもそと始めた。 その男が着ている制服は、歩の通う高校の男子が着ている物と同じであった。 男が電車を下りる支度を済ませ、その数分後。男を乗せた電車は目的地に止まり。固く閉じていた扉は、プシュッ!という音と同時に開いたのである。 そして、男が気だるそうに電車から下りると。隣で騒いでいた男と女も下りてきた。
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