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男とその『仕事仲間』達は、今夜もまた、いつも通りの作業をこなす筈だった。 だが―――その日常は、何の前触れも無く崩れ去る。 立体駐車場の入り口で男達が遅れてくる一人を待っていた時―――その存在は、あまりにも唐突に現れた。入り口の前を音も無く通り過ぎ、十数メートル先で停まる一台のバイク。 ・・ その様子を見ていた男と仲間達は、それを取り巻く数々の異常に気が付いた。 まず―――文字通りバイクが音も無く通り過ぎたこと。タイヤが擦れるわずかな音はあったかもしれないが、肝心のエンジン音がまったく聞こえなかったのだ。エンジンを切って慣性に任せて横切ったという可能性も考えたが、それならば直前まではエンジン音が聞こえていなければならない筈であり、男達は誰一人としてそんな音は確認していなかった。 更にそのバイクはドライバーを含めたすべてが漆黒に包まれており、エンジンやシャフトはおろか、タイヤのホイールですらも漆黒に染め上げられていた。ヘッドライトは無く、本来ナンバープレートがつくはずの部分には、ただ黒い鉄板が掲げられている。街灯と月明かりを反射する部分から、ようやくその物体が二輪車らしいとわかる程度だった。
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