113人が本棚に入れています
本棚に追加
警鐘警鐘警鐘。俺の全身ピンチ警報発令中。 警笛警笛ピピピのピ。ドアを開けると女の靴が。」 「せ、誠二・・・・・・さん・・・・・・」 部屋の奥に行くと、ストーカー女が立ち竦んでいた。 不法侵入者である女に対して、俺は自分がやけに冷静になっている事に気が付いた。女の顔に浮かぶ表情に気が付いたからだ。 そして、俺は自分でも驚くほど冷めた声を搾りだしていた。 ・・・・ 「見たな?」 「えと、あの、私、そのッ・・・・・・」 彼女の顔に張り付いているのは、いつもとはまるで違う、不安と恐怖に満ちた表情。 ・・・・・・なんだ、こんな表情もできるんじゃないか。 ・・・・ そして俺は確信した。やはり、こいつは・・・・・・・・・・・・・・・・・ 見てはならない物を見てしまったのだ。 「あ・・・・・・あのぅ、誠二さん、私、・・・・・・ええと誰にも言いませんから!こんな事があっても、私、やっぱり誠二さんの事が好きで、えと、えと、大丈夫です。どんな趣味でも、私なら合わせて見せますから、えと、だから、えと」 攻守交替。今度は俺が彼女を追い詰める番になってしまったようだ。 「いいんだ」 「誠二さん!」 俺の言葉に、ストーカー女の声が希望に満ちる。 「いいんだ」 「誠二・・・・・・さん?」 冷めたままの俺の瞳に気が付いたのだろう。瞬時にその希望が不安に塗り替えられた。 俺は彼女の表情を完全なる絶望へと塗り替える為に、もう一度だけ声をあげた。 ・・・・ 「いいんだ」
最初のコメントを投稿しよう!