■シンデレラ

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リンク「俺は、作り笑いが嫌いです」 見抜かれた。 リンク「心から笑ってくれるなら、踊ってください」 勝手に自分からこの僕の場所に来て、見たこともないような顔で笑う君は誰なんだ? 汚れない笑みとは、君のような事を言うんだろうね。 僕は姫の手を握って、舞踏会会場へ続く扉を開けたー… 上辺だけの顔を並べる醜い人達の前で、僕と君はワルツを踊る。 誰かを傷つけないようにと 一人でなんて踊らないで どうか僕とー… 僕が手を引けば、それに合わせるかのように姫は軽快なステップでついてきてくれる。 まるで駒鳥のような。 僕は君を気に入ってしまったようだ。 マルス「随分とダンスがお上手だね、慣れているのかい?」 リンク「いいえ、独学です。貴方の顔を見ていれば次の動きなんて簡単に予想できますよ」 人の表情を見て判断しているのか。 君は賢いんだね。 でも、そんな人が幸せだなんて話は聞いたことがない。 僕もその内の一人さ。 マルス「ねぇ、貴女の名前は…」 ゴーン…! ゴーン…!! リンク『…やっば、もうそんな時間か』 姫はいきなり僕の腕を振り払い、呆けている人混みの中をかき分けていく。 今まで僕達のワルツに見入っていた人達は、慌てて姫に道を譲る。 姫は舞踏会から脱出し、外の階段を駆け下りていく。 マルス「ま…待って!君が誰かなんて今はいいから…。僕と結婚してくれ!」 月光あたる石の階段から、もうほぼ降りきったところに立ち止まっていた姫に声のかぎり叫んだ。 姫は来たときと同じように軽く会釈し、 リンク「ーー…!」 そう小さく呟いて、近くに待機してあった馬車に乗り込んで行ってしまった…。 もう距離が開いてしまっていたからか、あるいは姫の声が震えていたからかわからないけど…。 聞こえなかった。 でも、彼女の口は確かにさっき紡いでいた。 待っています、と。 残ったのは、 光り輝くガラスの右靴 ただそれだけ .
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