61人が本棚に入れています
本棚に追加
はらはら
はらはら
それはとめどなく流るる
弱者の美しさ。
<幼い君にキスを†>
一瞬だった。
身動きもせず、まばたきもせず、それはもう人形のようにただ突っ立って。
ただ、その幼さ特有の大きな瞳からは静かに涙が溢れて頬に伝わり、それは乾いた地面に落ちる。
さっきと変わらない。
ただ違うことは一つ。
涙とは違う赤い何かが地面にぽつぽつと散ってゆく。あの鉄臭さからして絵の具だの、そんな可愛い冗談は通じない。
はらはらはら。
そんなに涙を流したら、いま目の前にいる子の水分が枯れるんじゃないかって思った。
はは、僕もこの子と同じくらいの歳なのに。
どうしたの?
リュカ「あ…ネスさん。来てたんだ」
ふと正面から声をかけると、彼…リュカはやっとこちらに気付いたように見た。
ここは『亜空』と呼ばれる、タブーってゆー悪い奴が作った空間。敵は多いし広いし…。仲間と合流するのも一苦労する。
ネス「呼び捨てでいいんだよ?歳だって近いし…友達でしょ?」
リュカ「…そうだね、ごめんネスさん」
はらり。
また涙。
どうやら、何か深い悩み事があるらしい。なんか僕のしゃべってるはずなのに、なんか上の空。
ネス「…ねぇリュカ。どこか怪我してるの?血が流れてんだけど」
そう、今リュカの腕や服、さらには髪にまでも血が付いている。生々しっ。
リュカ「…!!だ…大丈夫だよ、う…ん」
少し笑い、徐々に語尾が小さくなり彼は俯いてしまう。
何か大丈夫。無理してるのバレバレだし、つくならもっとマシな嘘をついたら?
ネス「冗談じゃない、回復してあげるから怪我してるところ見して、早くっ!」
怒ったような口調にリュカはビックリして顔を上げた。僕は血がひどく付いている彼の右肘を掴む。
はらり。
リュカ「さっき、人を殺したんだ」
ネス「…初めて?」
リュカ「ううん、昨日と併せて2人目」
.
最初のコメントを投稿しよう!